設計思想
かたちは目的ではなく、条件への誠実な応答の結果である。私たちが設計で大切にしている態度をまとめました。
私たちは、建築を「足し算」ではなく「翻訳」だと考えます。
敷地の光、街の記憶、使う人の時間。
目に見えない条件を読み解き、必要なものだけを過不足なく置く。
残された静けさが、長く使われる空間の核になります。
光を、設計の最初の素材として扱う。
開口の位置と大きさは、明るさの確保だけで決めません。一日の太陽の動き、季節ごとの陽の入り方を検討し、 時間とともに表情を変える光を空間に組み込みます。
直射を和らげる庇、光を拡散させる白い壁、影を受け止める深い軒。 派手な仕掛けではなく、光と影のグラデーションそのものを空間の主役にします。
素材は、素材のまま見せる。
コンクリート、木、石、左官。私たちは仕上げで覆い隠すのではなく、素材が本来持つ質感と経年変化を肯定します。 時間とともに味わいを増す素材を選ぶことは、長く使われる前提に立つということです。
サンプルは必ず実物の大きさと光の下で確認し、現場で調整します。図面の上だけでは、素材の本当の表情は決められません。
いちばんの環境配慮は、長く使われること。
流行に左右されない普遍性と、更新しやすい素直な構造。建て替えを前提にしない建築こそ、最も持続可能だと考えます。
パッシブ設計
通風・採光・日射遮蔽を建築の形で解き、設備に頼りすぎない快適さを確保します。
更新しやすい構造
用途変更や設備更新を見越し、スケルトンとインフィルを分けて長寿命化を図ります。
地域の素材と職人
輸送負荷の小さい地場の素材と、地域の職人の技術を積極的に活かします。
「答えは、いつも敷地の側にある。」
設計を始めるとき、私はまず手ぶらで敷地に立ちます。何を建てるかを決める前に、その場所が何を求めているのかを聞く。 風の通り道、隣家との距離、地面の起伏。条件は制約のように見えて、実は設計のもっとも豊かな手がかりです。
建築は完成したときが終わりではありません。住まい手の暮らしや街の活動とともに、ゆっくりと育っていくもの。 その長い時間に耐える静かな強さを、これからもつくり続けます。
代表/一級建築士 子午 玲一(しご れいいち)